ゴロヴァノフ節、全開!!

あの「男」ゴロヴァノフがやってくれてる。
原色むせ返る「シェエラザード」
復刻はやや針音が気になるが、良質。
惜しむらくはオケがやや「重い」。
ボリショイの演奏精度(特に弦)が
唯一の不満要素か。


GOLOVANOV VOL.1 78RPM

Rimsky-Korsakov Scheherazade, Op.35
Tchaikovsky Overture Solennelle 1812, Op.49
Khachatrian Lezghinka & Sable Dance from Gayane
J.S.Bach Air from Suite No.3

Nikolai Golovanov
David Oistrakh (Vn, Scheherazade)
Boishoi Theater Orchestra (Scheherazade)
Moscow Radio Symphony Orchestra (1812 & Gayane)
Boishoi Theater Brass Band (1812)
Ten Chellists of Moscow Radio Symphony Orchestra (Air)

Recorded in 1947 (Scheherazade & 1812), 1944 (Gayane), 1945 (Air)

GRAND SLAM RECORDS/Japan GS-2003(MONO)


まずは、このCDの製作者の平林直哉氏に拍手を送ろう。一つは、
これまで陽の目を見なかった、ゴロヴァノフのシェヘラザードを
世に出してくれたことに。そして、安直なデジタル処理よるノイ
ズ除去に組しなかったことに対して。

まず、この復刻について述べなければならないだろう。

多分、現代のSP用カートリッジ(SONOVOXだろうか?)を使って
板起こししたであろうこのCDの音質は、クリアな高音と十分すぎ
るダイナミックレンジを持っている。しかしその分、SP特有の、
音が塊になって飛んでくる感じがやや減り、サーフェイス・ノイ
ズはどうしても、やや耳につく結果となった。しかし、ここまで
正直な復刻は近来、稀に見るものだ。大メーカーや海賊盤メーカー
のインチキSPサウンドと比べていただきたい。できれば、電磁型
カートリッジで再生して欲しかったが、それはデジタル全盛の市
場を考えると、無い物ねだりなのかもしれない。

さて、演奏に移ろう。

まずどうしても不満要素として残るのが、ボリショイ・オケの演
奏精度。どうも弦のタテの線が合っていない。早いパッセージで
は演奏が崩れがちに、腰砕けになる。これはいただけない。もっ
とも、ゴロヴァノフの要求するテンポは、演奏者のことなんて
チ〜ットモ考えてないことも、その一因なのだが。

さてゴロヴァノフの解釈だが、もしメンゲルベルクがシェヘラザー
ドを振っていたら、これに近いものになったのでは、という印象
を受けた。つまり粘る部分は粘るものの、全体的には早めのテン
ポで一気呵成に仕上げたような感じを受けた。どちらかと言えば、
二項対立的解釈と言うのだろうか。その意味で「ロシアのフルト
ヴェングラー」という評価は正しくないだろう。むしろメンゲル
ベルクにこそ、より近いと思う。しかし、メンゲルベルクがすべ
て計算づくで演奏したのに対し、どう聴いてもゴロヴァノフの場
合は暴走したコンピューターとしか言いようがない。もはや、オ
ペレーター自身も修復のしようがないのだ。そんな破綻しまくっ
ている演奏だ。とにかくこのシェヘラザードは聴いてみて欲しい。
ストコフスキーとは全く異なるが、このアプローチは面白い。

しかし、余白に入っている「1812年」は、私にとっては「拷問」
に近かった。なにしろ、ブラバンがひどすぎる。クラリネットは
調子ッパズレな音を出すし、トランペットはこれまたヘタ。マイ
クのまん前に、ずらっと並んだであろうコイツラが、音楽をぶち
壊している。一体どこのブラバンだと思ったら、やっぱり「ボリ
ショイ」。ため息しか出ないと言うのは、このことだ。これじゃ
まるで中学生のブラバン以下の演奏だ。ああ、無性にメンゲルベ
ルクの1812年が聴きたくなった。 inserted by FC2 system